前回の『ナリワイをつくる』に続いて
『フルサトをつくる』を読んだ。
最初の所で言っているが『多拠点住居』についての考察である。
前回読んだ『ナリワイをつくる』という本の続編といった感じ。今回の本を読んでも思った事なのだが、著者の伊藤さんの考えの根っこには「一つに特化するのってけっこう危険じゃないっすか?」という想いが根底にある気がする。
『ナリワイを作る』は仕事に関しての本だった。一つの仕事に従事し専門的な仕事に就いてスキルを磨いていく事を否定はしないが、みんながみんな今の社会に適応できる訳でもないし、セーフティーネットとして複数仕事もってみてはどうですか?という提案だったというように解釈している。
今回は住居やコミュニティに関しての考察。「こんだけ変化の激しい時代に住居だけは35年ローンて危なくねぇ?」とか「田舎ってホントに閉鎖的なの?」みたいな誰が言った訳でもないが、何となく常識として受け入れていた事を検証し実際田舎にシェアハウスを作りながらの考察がなされている。
基本的な思想は前回の『ナリワイをつくる』と変わらないのだが、読んでて好感持てるのは一回「仕事とは何ぞや」「住むってなぁに」「コミュニティって言葉何か曖昧すぎない?」みたいな疑問を一旦本質的な所まで降りて行って、伊藤さんなりに咀嚼して実際に行動に移してそうで総括しているところだ(たぶん行動しなが気づくんだと思うが)
個人的に参考になったのは秋くらいからちょいちょい二階のリフォームをお手伝いしているので、イベントを開く際の注意点、「1人2人でやらない方がいいよ」「丸ノコは危ないから気をつけて」みたいな事が結構タイムリーに書いていた。
先月行ってきた『全国床張り協会』の石川さんも徳島に移り住んだ人だった。
元々二階のリフォームを始めた頃に参加して下さったO田さんが以前設計の仕事をされており、図面だけではなく実際に触れてみたいと考え、床張りのワークショップに参加されて、良かったので紹介してもらった。全く前情報なしの状態で『全国床張り協会、徳島支部の石川さん』と聞くと何とも胡散臭い怪しい響きだった。
自分の勝手な妄想によると、きっと青い作業着のズボンによれよれのベスト、頭にタオルを巻いて耳にえんぴつを乗せている。集落の離れに自給自足に近い生活をしている偏屈な大工のオッサンを想像したが、実際お会いしたのは30前後の若い夫婦だった。
一泊二日の日程だったので作業以外にもコミュニケーション取る時間が多かった。自分以外の参加者は伊藤さんのファンの方や考え方にシンパシーを感じて参加している方だったので事前情報が少しはあったのだが、夜の空いた時間に聞いた予備知識なしで聞いた田舎の生活の話は、なかなか刺激的な話が多かった。
今考えると石川さんは伊藤さんの書いた『ナリワイを作る』のメソッドをかなり忠実にを実践されていた。本を読んで「よ〜し、自分もやるぞ!」と意気込みはするが、実際行動起こせる人は案外少ない。
メインはみかん農家だが、時々このようなワークショップを開かれたり、住んでる家はゲストハウスになっていて、古本屋もやっている。今は片手間で鳥小屋を作っておられ、結局一体何している人なのかあんまりわからない、「職業:石川さん」としか呼びようない人になっていた。元々東京に住んでおられ、結婚後徳島に移り住んだそうだが、実際の生活者の話は面白い。
一番驚いたのが、住居に関してである。
人様の話なので詳細が話せないのが残念ののだが、現在の住んでいる家はほとんど家賃がかかっていないそうだ。例えば、東京で二人で生活していれば月8万くらいのマンションで生活しているとして年間で100万円近くかかる。その分車は必須だったりするので一概に比べる事もできないが、家賃だけで考えればワーキングプアーと呼ばれている年収200万円の人も300万円程度の生活水準をキープできそうな感じである。年収いきなり100万上げるのは至難の業だし税金まで高くつく。しかも狭いマンションではなく広い家でである。収入は多少減ってもそこまで不便も感じないといった事も見栄でもウソでもなさそうだった。
仕事に関しても田舎に引っ越すと言うとその土地で就職して地の人の人間関係に揉まれながら染まっていくというイメージだったが、みかんの閑散期に東京で仕事したりする事もあるそうだ。
今はネットだけでも仕事ができるし、移動も便利になった。『木綿のハンカチーフ』や『なごり雪』の歌詞の様に移動に関してそこまでの悲壮感がなく、ピーチとかでも簡単に移動できる。
前職の関係で人手が足りない時には数週間仕事を手伝いに行く事もあるそうで、実家に戻るから家賃もかからないし、仕事の終わりが見えていれば親に小言を言われる事も少ないと思う。たまーに東京行くのは観光や半分気分転換もあったりして何かいい気がする。たぶんこれらは実際に生活しながら結果的にこうなったのではないかと思う。
リアルな話を聞いていて個人的には今移住しても何ら問題ないような気がしたが、何のツテもなく移り住むのはハードルが高いのと、少なからず同年代の友達か、考え方の近い知り合いくらいは必要かなと思った。既に徳島では神山町のような田舎で成功した事例として紹介されるような町はあるんだろうが、きっと少なからずヒエラルキーみたいなものがありそうなので(神山町の事はなーんも知らんが)それはちょっと違う気がした。あとは合気道の稽古ができないという点が一番ネックだった。
参加者の一人は移住しようか迷っていた。ちょうど仕事が大変で疑問を感じている時期らしく(伊藤さんの本はちょっと待てよ、と人生に立ち止まって考える人と相性がいいのだけれど)羨望の眼差しを石川さんに向けていた。確かに石川さんは自分で仕事を作って働いて鳥小屋や縁側など必要と思ったものをガンガン作っていく姿は自信に満ちて見えた。
前回壁塗りをやって、床張りもしてしまうと気がつけば部屋の表面積の6~7割はもう自分でできてしまう事になる。もちろん業者さんのプロのクオリティに比べれば大した事ないが、何より自分で作るのは楽しい。楽しい事ならみんなで共有した方がもっと楽しいし、「自分でつくった」「自分でやった」という体験はあんまり達成感を感じにくい日常と比べると自信につながる。
街を歩いていても最近「これ作れんじゃね?」ととりあえず構造をたどってしまう変なヘキがついてしまった。
住空間に関しても、本によれば実際新築の家を建てるのに比べると大層できるとの事だ。もちろん自分が作業する人件費、材料費はかかるが、給料をあげるのが難しいこのご時世に2000万以上節約できるのはありがたい。
ちなみに石川さんとは今もメールのやりとりをしている。2月にやる予定の床張りでわからない所を気兼ねなく聞ける。いちいち電話や手紙という訳にはいかないし、これも現代ならではではないだろうか。ビル・ゲイツ様々である。
興味を持たれた方、都会の生活に疲れた方はこちら。
石川さんのホームページ
https://aotokuru.com/about/
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